Iターンして芸術活動
山々の緑に囲まれ、清流大屋川が静かに流れる。夜には満天の星が降るように輝く自然豊かなまち、養父市大屋町。そんな「星と語る森と清流のまち」に平成26年に大阪から移住してきたのが、美術作家の河内友久さんと写真家の明子さんご夫妻。広いアトリエを探していたところ、「養父市大屋町でアーティストが集まって何か面白いことをやっている」と聞きつけ、おおやアート村BIG LABO(大屋町加保)を訪問したところ、直感で住みたくなり、移住を決断。
「養父市に来て良かったです。もう少し若いうちに来られたらよかったけど、流れもあるし。養父市に来てからは毎日が刺激的です。都会が『あるもので遊ぶ』という感覚なら、こっちでは『何もないから作り出す』という感覚。作り出すことが楽しいです。」と友久さん。明子さんは「回りが山々に囲まれて、開放的な場所で気持ちいいと思いました。空気が全然違います。出会う人出会う人が面白くて。話を聞いていたらここに住みたいなって。」と話す。
旧南谷保育所でカフェを開業する。
移住者にとって地域との関わりも不安要素の一つだが、河内夫婦は「都会だと地域との関わりは少ないけど、養父市に来てから、いろいろな行事に誘ってもらっている。田舎はゆったりとしていると思っていたが、意外と忙しい。その分充実している。」と笑う。「地域の伝統行事を後世につないでいくことはすごいことで、そういう行事や祭りに自分みたいなよそから来た者が参加し、手伝えるというのは、伝統の一部となっているようで楽しいですし、受け入れていただけるのがすごくうれしい。」とあくまで前向きだ。
アトリエは、昭和61年に廃園となった旧保育所で、その後陶芸家らの工房として使用された施設を借り受けた。傷んだ床や壁、窯などを自ら改修し、ギャラリーや工房のほか、カフェも併設。「GOCCO(ごっこ)」と名付け、7月17日には、ギャラリー、カフェのほか、手作りのインターネットラジオ局を本格オープン。アトリエには、地域の人たちがふらっと訪れ、採りたての季節の野菜を置いていく。
「採りたての野菜も多くいただいています。作っている人の顔が見えるので、すごく身近に感じるし、逆に僕たちに何ができるのかなって、恩返しができないかと考えています。」カフェを企画したのもみんなが集える場所を提供したいと考えたからだ。
これから移住を考えている人に対しては、「無理をせずに田舎暮らしを楽しむことが大事。住んでみないと分からないことも多いし、戸惑うこともあるかもしれないが、地域の人と積極的に関わりを持つことで、優しくしてくれる。移住への一歩を踏み出すには勇気が必要だけど、やってみないと分からない。まずは遊びでいいので一度訪れてみて、地域の方と交流し、その土地を感じてほしい。アトリエに立ち寄っていただければ、私たちも相談に乗りますよ」と答えてくれた。